十分な時間と予算

建築工事には工程という物があります。一戸建てなら設計、地盤調査、測量、基礎工事などそれぞれ順を追って進めていくわけですが、ここに十分な時間という概念が加わります。

十分な時間

乾燥時間

塗料などを塗った後乾燥するのに必要な時間です。これは用いる材料によって異なってくるため、用法に従ってしっかり乾燥時間を取る必要があります。

硬化時間

防水材やシール材など反応硬化する事によって機能を発揮するものは、硬化時間を十分にとります。完全硬化という概念のある建材については、表面的には固まって見えても、完全に硬化するまでにさらに数日必要となるため、そうした性質を十分加味して施工しなければなりません。

オープンタイム

糊や接着剤、ボンドなどでは塗ってから一定時間おいてから対象を接着しなければなりません。四季を通じて微妙に異なるため、用法に従って規定通りのオープンタイムをとります。

時間と予算

上記のように固まったり、乾燥したり、硬化したりするために一定の時間が必要となると、時間的ロスは大きくなります。また、作業を中断するためにその日の作業がなくなってしまう事で、人件費も嵩みます。十分な時間をとるというのはゆとりを持って工事を進める事でもあるわけですが、逆をかえせば、ロスを増やす事でもあるわけだからです。予算を絞るとどうしても作業時間を縮めなければならず、時間的ゆとりを犠牲にせざるをえなくなってしまうのです。

合理性と整合性

予算を削るためのノウハウや話題に事欠かない最近の建築現場では、予算が削られるとともに時間も削られるかもしれないという事を忘れてはなりません。建築費の内訳でその大半を占めると言っても良いのが人件費です。二時間で固まるというならば、本当は翌日に次の工程に進んだ方がよりいいとしても、同日に次の工程をすることになってしまうかもしれません。例えば15時くらいで職人全員を引き上げさせても17時までやったのと同じ手間(日当)がかかってしまいます。それが積もりれば利益どころか赤字にさえなってしまいます。合理性を求め予算を最小限に抑えたとしても、経費との整合性をとるために時間が削られるかもしれないという話です。

例えばこんな話

今日は天気予報で夜から雪が降るかもしれず、降水確率も50%というものでした。昨日は15時くらいで作業をやめ、全員帰宅しました。やれる事はありましたが、今作業を始めると明日いっぱいまでかかってしまい、万が一雪が降ってしまうとその水分ゆえにモルタルの成分が流れてしまうリスクがありました。そこで今日は現場作業をしない前提で、昨日も途中で作業を上がりました。経費はかかりますが、工事の進め方としては順当なものです。予算が潤沢というわけではありませんが、適度にありますので、性能を確保するために最善を尽くせる状況を維持できています。モルタルは種類も多く、それぞれ固まるまでの時間は様々です。それでも2時間もあれば表面的には固まっています。ところが内部では十分固まっていないため、直後に雨が降ったりすると成分が流れ落ちて周辺が白華してしまったりします。成分が抜けてしまえば本来の固さや機能は発揮されず、耐久性にも影響が出ます。

安かろう悪かろう

とどのつまりはそういう事です。かつてのように建築費が高すぎたのは問題でしたが、その後のディスカウントは行きすぎてしまいました。今は適正な価格に戻りつつありますが、それは工事の発注側にとっても受注側にとっても健全かつメリットの多い事です。極端に安い見積金額の中には、何かが抜け落ちているのだと考えられないでしょうか。営業努力の一言で片づけられない問題がそこにはないでしょうか。何年かおきに生じる不正や手抜き問題にその都度揺れてきた建築業界。その業界に身を置く者として、安かろう悪かろうという言葉を今一度見つめ直さなければと思っています。

>リフォームをお考えの方

2016年01月23日