とっても大切な下地補修

下地補修の重要性(左官補修)

下地は素地とも呼ばれ、その状態を整える事は極めて重要です。外壁の劣化に伴いまずは表面のコーティングなどの機能が低下します。その後保護機能を失った外壁に風雨の影響が出始め、ついには躯体にもダメージが出てくるのです。そうなるとしっかりと下地補修や下地調整を行って、素地を当初の状態に近づけなければ、外壁の強度が低下したままだったり、その後行う仕上げの工程の効果を低下させてしまいます。

下地補修と調査

見積りは見込みで

外壁工事における見積もりでは下地補修の項目にきちんと下地補修費用が計上されています。これは外壁に対して5%などの見込みをとりあえず設定したもので、実行後に増減表に基づいて精算されるという事は案外知られていません。下地は足場を書けない状態で目視で確認できるものではありません。しかし、一般の方には目安となる金額あるいは単価が知りたいところでしょう。そこで、仮に%を定めて、その程度の数量ならいくらになるという目安を提示するわけです。

下地調査

足場架設が終わると下地調査を行います。打検ハンマー(打診ハンマー)などの道具で壁を叩き、その音で状態を判断し、異常個所にマーキングしていきます。タイルやモルタル壁が浮いている時の音とそうでない正常な時の音ははっきりと異なっているからです。浮き、破損、割れなど、壁になんらかの問題があればそれがどの範囲で、どのくらいの症状なのかを誰でもわかるように表示しておくのです。

図落とし

図落としは下地調査によって判明した外壁の異常を立面図などに書き込む事です。東西南北それぞれの面のどこにどのような問題があってそれがどれくらいの数量なのかを書き込みます。

増減表

図落としが終わると直ちに増減表を作ります。見積もり時に仮に出しておいた数量と実際に調査して判明した数量を比較するためです。増減表によって見積り時とどれくらいの違いがあるのかが一目でわかります。少なければ見積金額より低い請求となりますし、多ければ見積もりより多くの費用を最終的に請求する事となります。

打合せ・話し合い

見積りより金額が低くなる場合には喜ばれる事になるでしょう。でも、高くなる場合には事はそう簡単ではありません。出費が増えるのですから、難色を示される場合も出てきます。そもそも、予算的に無理だというケースもあるわけです。第一に、見積もりの段階でこうした見積金額と違いが出てくるという事をしっかりと説明しておかないとトラブルの原因となります。第二に、増減表を見ながら相互に納得のゆく結論を出すよう十分話し合わなければなりません。予算はない、でも下地補修は完璧にやって欲しいと頼まれ、とても心苦しい時もあります。下地は頼む側にとっても頼まれる側にとっても切実な問題となり得ます。下地が極めて重要だと言いましたが、予算のために調査によってわかった問題全てに対象できないとしたら、工事全体としての品質は下がってしまうかもしれません。けれども、施工する側としても予算の無いまま無理に全項目を行うと利益が出るどころか赤字にさえなってしまいます。我々工事業者の間では下地補修こそ工事屋泣かせの項目はないとも囁かれます。

下地補修の項目

クラック

クラックはヒビ割れの事です。漏水の原因と言うと屋上や屋根が原因と考える人が多いのですが、壁から水が入り込んで雨漏りする事もしばしばあります。大きく深いクラックやパイプなどの接続部(接続のために壁を貫通)などがその例です。クラックはヒビの大きさによって処置が異なります。軽微なヒビ割れでは「擦り込み工法」によるシーリング工事を行います。大きなヒビ割れでは「Uカット工法」によるシーリング工事を行います。

擦り込み工法

軽微なクラック補修

軽微なクラックではセメントフィラーやフィラーなどを上から擦り込むようにしてヒビを埋めます。

擦り込み工法によるシーリング

軽微なクラックでは塗装の下塗り材としてフィラーを用いれば埋るのですが、クラックのある箇所にはフィラーを二回塗る感覚だと、さほど手間をとられずに済みます。真っ先にクラックカ所だけをフィラーで塗り、しばらくして乾燥したころに塗装の下塗りとしてのフィラーを塗る様か感じです。

Uカット工法

Uカット工法によるシーリング

大きなクラックではクラックは壁の奥深くまで割れています。こうした場合に上からシーリング材等を充填しても奥まで十分に行き渡りません。こうした場合、サンダー(電動カッター)でクラックに沿って溝を作り、奥までシーリング材が到達するような処置をします。Uの字型の溝が出来るため、Uカット工法と呼ばれます。Vカット工法も同じです。溝の形がVにも見えるかUに見えるかの違いだけです。

シーリング材充填

Uカット後、表面に着いた粉などを掃除して、プライマー塗布、シーリング材充填、ヘラ押えと進みます。シーリング材で溝を埋めきらず、周囲より低い位置で押えます。最後に軽モルなどでほぼ周囲と同じか少し低い位置で仕上げ、最後に肌合わせします。

浮き

タイルやモルタルなどが浮いている状態。タイルの浮きは落下などに繋がるため、大変危険な状態です。本来はタイル自体が躯体に接着していなければならないのに、接着が甘くなっているのですが、目地材でかろうじて落下しないような状態と思ってください。タイルと躯体の間にエポキシ樹脂を充填して接着するのがその対処方法です。目地に穴をあけ、そこからエポキシ樹脂を注入するため「注入工事」と呼ばれます。注入さるエポキシ樹脂はボンドなどにも用いられるもので、注入されると円を描くようにタイルの裏側に広がって固まります。

エポキシ樹脂注入

穴あけ

タイル目地に穴をあけ、清掃を行い、エポキシ樹脂を注入します。







エポキシ樹脂注入

下地調査でマークした箇所にエポキシ樹脂を注入し、ここではピンを差し込んでタイルと躯体の間にかませます。エポキシ樹脂でタイルを接着するのに加え、タイルの下側に固定したピンでタイルを支えます。

欠損

モルタルやコンクリートの表面的な欠けや破損の事を欠損と言います。こうした箇所を放置すると徐々に欠損部が広がり、落下などのリスクが増えます。

欠損補修

欠損補修

欠損は躯体内部が露出された状態です。外壁はモルタルにせよボードにせよ表面をコーティングする事で保護されています。屋上やベランダの笠木のようにそもそもモルタルが露出している場合はこの限りではありませんが、そうは言っても放置しておけば状態は悪化します。




軽モルで左官補修

欠損の補修はコテで左官補修します。軽モルという密着性の高い下地補修材で埋めます。

爆裂

クラックなどから水が入り込み、中の鉄筋が錆びてしまうと体積が増え、錆びた鉄筋の周辺が盛り上がってしまい、ついには剥がれ落ちて穴が空いてしまいます。こうした状態を爆裂あるいは爆裂欠損と呼びます。

爆裂補修

爆裂補修

爆裂は欠損の一種ですが、原因が鉄筋などの錆によって膨張して起こるために特にこのように表現します。穴の開いてない状態でも周囲より盛り上がっているため調査でこうした箇所をマーキングしておきます。盛り上がった部分をハツリ、鉄筋を露出させ、その錆を落とし、防サビプライマーを塗布します。鉄筋が錆びた事が原因であるため、その鉄筋の処置が不可欠となります。

 

軽モルで左官補修

あとは上記欠損の補修同様軽モルなどで左官補修を行い、肌合わせ、塗装と進みます。

割れ

タイル貼り替

タイルハツリ

タイルにヒビ割れや欠けがあった場合、そして浮きが注入で収まらない時にはタイルを貼り替えます。タイルの貼り替えで注意すべきは、タイルの納期です。新築時には余ったタイルを段ボール箱に入れて現地に置いておくのですが、何十年も経つとなくなってしまう事があります。そうした場合、近似のタイルをカタログから探すのですが、そうなるとどうしてもまだら模様になってしまいます。タイルのサンプルをメーカーに送り窯で焼けば、そうした違和感を解消できますが、納期に三か月かそれ以上かかってしまいます。

新規タイル貼り

カタログから近似のタイルを選んだ場合は、1週間前後で納品されますが、周囲とまったく同じものではありませんので、このようにまだら模様になってしまいます。新規タイルを貼り材で接着させ、しばらくおいて目地材で目地を埋めます。

肌合わせ

下地補修をするとどうしても周囲と模様が違ってしまいます。補修箇所を周囲に合わせる工程を「肌合わせ」と呼びます。

肌合わせ

肌合わせ

肌合わせは周囲の模様に合わせる工程ですから、外壁の模様によって吹付けやマスチックローラーなど使い分けます。ただし、吹付は周囲への飛散のリスクが高い為、マスチックでなるべく近い模様を付けるのが無難だとも言えます。